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1947年埼玉県生まれ。1972年武蔵野美術大学卒業。
79年より個展・グループ展を多数開催。東京国立近代美術館、セゾン現代美術館等に収蔵。
現在武蔵野美術大学名誉教授。
これまで取材したプロ

机は過去と現在を結び未来を呼ぶ場所。

現代アートの絵の世界は見えている形ではなくその裏側にあるものを見せてくれています。一見難しそうに見えますが、作者の心を感じればいいのです。長沢秀之さんの作品は独特の表現が使われています。じっと見ていると時間を乗り越えた懐かしい想いにかられます。

・子どもの頃のことを。
長沢「自然に囲まれた環境の中で育ちました。田や畑で遊んだり、野良仕事を手伝ったりしていました。小さいころから絵が好きで、よく描いていました」
・それからずっと絵を?
長沢「いえ、中学のときは勉強に専念していました。本を読んでその世界に没頭していました。美術部に入ったのは高校からです。石膏デッサンは嫌いでしたが、想像して描くのが好きでした。ただ、最も熱心だったのは映画を見ることで、いろいろな刺激を受けました。映画は特に世界への視野を広げてくれました」
・絵の本格的な勉強は?
長沢「美大に入りましたが、当時は大学紛争のさなかで、絵も中断しかけていましたが、映画を見たり自分で実験的な映画を撮ったりする中で逆に絵の面白さに気づき、やってみようかと絵に専念することにしました。油絵のことを知らなかったことが幸いしたといいますか、何にも縛られずに描くことができました」
・画家としての道は順調に?
長沢「大変でした。生活するためにバイトをし、最初は貸し画廊での個展をしました。このとき美術館の学芸員の目に留まり、美術館の企画展で展示をやることになりました。私にとっては重要なステップでした」
・作品は抽象?具象?
長沢「私には抽象画とか具象画という境はなく、具象の上に点をランダムに入れていくという表現手法をとっています。点の向こう側に過去の時間があり、その入り交じった画像が結びついて曖昧で不可思議なものが浮かび上がって来るように感じます。幽霊のような感じですが、これは単純に過去のものではなくもっと時間が入り組んだものです。私はこれを未来の幽霊と呼んでいます」
・なぜその技法にこだわる?
長沢「過去と現在との距離感を認識し、今を生きているということにこだわりたいです。点描風のタッチは、今私はここにいるという印のようなものです。点を入れるときはほぼ機械的です。キャンバスを回転させながらランダムに入れています」
・大切にしていることは?
長沢「絵具の力、キャンバスの力、筆の力を借りて、自分自身の頭の中だけで終わらせず目に見えるようにするということで、それは自分でも観てみたいものでもあるわけです」
・これからの夢を。
長沢「奄美の住民の方に協力してもらいその土地の過去と現在を結ぶ作品を制作しました。その神戸編をやってみたいです」
・ありがとうございました。


*編集部より*
長沢秀之さんのサイトがあります。ご覧ください。
https://nagasawahideyuki.net

「過去の画像を消すように絵の具をランダムに画面においていくのが楽しい。チューブに入った絵の具をそのまま出す感じなのですが、絵の具のぐちゃっとした混じり感覚が好きです」

「1941年、記念撮影」2016年
(所蔵:武蔵野美術大学 美術館)
「1938年頃、女学生(母の姉)」部分 2016年
 
「1969年、ポメラニアン」2016年