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1957年東京都生まれ。壁画家。82年武蔵野美術大学油絵科卒業。全国各地に壁画、モニュメント、ステンドグラスなどを130点以上制作。フランスやアメリカなど世界各地で活動。
これまで取材したプロ

机で私は真っ白になり制作を始める。

大きな絵を一度は描いてみたい。多くの人にメッセージを届けたい。そんな気持ちを持ったことがありませんか?その夢に応えてくれるのが壁画です。絵というよりも建物空間と一体となって、見る人の心に響きます。ダイナミックな壁画を制作する人はきっと大きな人と思って、壁画家の松井エイコさんを訪ねました。意外にも小柄な松井さん。しかし出ている情熱オーラはとびきりダイナミックで深い魅力で一杯の人でした。

・小さい頃のことから。
松井「人間は一人一人個性があって、自分らしさがあります。私もそういう一人です。おままごとで、友だちがお父さん役とかお母さん役をする時、私は自分の大好きな犬の役になりました。首にひもをつけてワンワンと吠え、自分らしい役を誇らしく感じていたのです」
・元気な子だった?
松井「それが、幼稚園では、皆でそろって同じ踊りをしなければならなくて、でも私は理由もなく同じ踊りができず、一人だけボーとしてはみ出してしまう」
・では、どこで絵を描いた?
松井「その後に入学した学校は生徒一人一人の個性を育てる教育の理想をめざしていました。そこで18歳まで育ち、『自分らしい』ことは素晴らしいことなんだと、自信が生まれたのです。また、私の母は私が4〜8歳の時美大生で、私の周りには専門的な画材があって、絵を描くことが好きになっていきます」
・絵を専門にしようとした理由は?
松井「4歳の時、自分らしい『好きなこと』を選んで生きていきたいと願うのに、決められずに悩みました。苦しんでいる私に、母が言った言葉『今は小さな好きなことでも、続けていくうちに大きな好きにしていくことができるよ』は、今でも忘れません。15歳で絵描きになることを決めました」
・壁画には?
松井「大学では油絵を学びました。卒業後、児童書専門店のクレヨンハウスから『店の壁に壁画を描いてくれる人いませんか』という電話があり、『私がやります』と答えたことが始まりでした。この仕事を通して、一生かけて壁画にしかない世界を追求したいと出発したのです」
・画材は?
松井「壁画を描くに当たって、塗装屋さんや左官屋さんに基礎的なことを教えてもらいました。メキシコの壁画運動がアクリル絵具を生み出したことも知りました。出発の頃はアクリルだけでしたが今は、ガラスモザイクなどが主になっています」
・壁画とは?
松井「人間をテーマに壁画の道を歩んでいます。見る人が未来に向かって希望の一歩を踏みだすことのできる世界をつくりたい。壁画独特の空間には心を解き放つそんな力があると信じています」
・ありがとうございました。

 

「壁画の下絵はスケール感が不可欠ですね」

 
北海道士別市ふれあいの道公園壁画「未来を拓く四つの力」
(ガラスモザイクW30×H3.1m)夜景
 
常磐大学同窓会館ステンドグラス「共に見いだす時」 (モザイクステンドグラス 直径2m)
 
静岡・初倉保育園ガラスモザイク壁画「手渡す未来」(部分)
 
作品写真・加藤嘉六