廃品アートというのが静かなブームになっています。時代はエコロジー。落ちているものやいらなくなったものを使って新しい命を吹き込むのが、廃品アートの神髄。廃品を生かしつつも、そこに作者の手が加わり、造形としての美的な感動が生まれる。本多厚二さんは、彫刻家というよりも、ピノキオのおじいさんのようなユーモアと優しさがあります。制作の場にしている西麻布の九美堂ギャラリーを訪ねました。
・子供の頃から作るのが好きだった?
本多「どちらかというと、いつも落書きをノートの片隅にしているような子供でした。別にものを作るのが好きとかではなくて、落書きが楽しかった」
・でも、大学では彫刻を。
本多「姉の夫が日展作家で、影響を受けましたね。それで美大へ行く気になったのですが、彫刻が一番入りやすかった。美術ならどこでもよかったのです」
・どんなものを作っていましたか?
本多「石に取り組みました。ただ、制作したのは多面体。すきがないものを作るのが好きでした」
・大学を出てからのことを。
本多「東京に出て、公共施設の造形物を主に制作している会社に就職しました。そこで、からくり時計とか、彫刻のある街といったプロジェクトに関わる仕事をしていました。でもだんだん絵が描きたくなって、会社を辞めて独立しました。それからは立体とイラストという2つのジャンルで作品を作っています」
・廃品アートへのきっかけは?
本多「グループ展で出品した廃品による立体作品を画廊の人が見て、100個できたら個展ができますね、と言ってくれたのを機に本格的に取り組み始めました。36歳のとき個展を開催しました」
・どんなことに気をつけてる?
本多「そこにある形に人工を組み合わせて、自分の納得のいく形に仕上げるようにしています。その素材だけで、仕上がっているようなものではなく、作っている途中で、命が与えられるような瞬間が欲しいですね。そんなにかしこまったものではないのですが、立体で落書きをしているような楽しさを大切にしています」
・道具は?
本多「カッターナイフとか学童用の彫刻刀、100円ショップに売っているような道具を使っています。不便な道具を使うことで、自分の意志通りにいき過ぎないようにしています」
・これからのことを。
本多「大きい彫刻はさんざんやってきたので、小さい作品をもっと作りたいと思っています。小さいけれど、それが、ふっと気になる作品を作りたいです。どこか不完全な立体ですが、だからこそ語りかけてくるようなモノ達。それらをピクチャーブックにまとめたいです」
・ありがとうございました。
*編集部より*
本多厚二さんのHPがあります。ご覧ください。
http://www.interq.or.jp/world/hon/
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